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【企業法務・コンプライアンス相談室】 試用期間中の労働者に対する本採用拒否が有効と認められたケース
【経営者からの御相談】
当社に入社して2ヶ月の試用期間中の従業員Aが、業務中、他の同僚社員に暴言を吐いたり、不適切発言を繰り返しており、対応に苦慮しています。本採用拒否をすることは可能でしょうか?
【弁護士からのアドバイス】
1 最高裁の考え方(三菱樹脂事件 昭和48.12.12)
最高裁判所は、試用期間中の労働者に対する本採用拒否の適法性判断に関し、「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない。」とした上で、「いったん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇傭関係に入った者は、本採用、すなわち当該企業との雇傭関係の継続についての期待の下に、他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることに思いを致すときは、前記留保解約権の行使は、上述した解約権の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。換言すれば、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしてその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができる。」旨判示しました。
2 今回のケースについて
具体的な事例で本採用拒否が適法といえるかどうかはケースバイケースですが、裁判例の傾向としては、不適格な言動等が見受けられるケースでは比較的緩やかに本採用拒否の適法性がみとめられています。
参考になる裁判例を以下に御紹介します。
①東京地裁昭和40/10/29(新田交通事件)
申請人が、試用期間中、前記のように粗暴な放言をしたり、軽率な発言等により同僚多数の反感を買う等、非協調性を明らかに示す行為があったため、会社は申請人を従業員として不適格と判断し、本件解雇に及んだものと認めるのが相当である。
②神戸地裁洲本支部昭和43/1/10(淡路交通事件)
試雇傭中のバス車掌が乗務中、職場の先輩たる従業員に対し、車掌として不適当な言葉を使い、同人を立腹させ、上長の監督者から謝罪するように言われて謝罪したが、その謝罪に一片の誠意も見られない態度は、会社の期待を裏切ったものであり、車掌としての適格性を欠くとしてなした会社の解雇は有効である。
試用期間中の労働者について、本採用拒否を検討されている経営者の方、企業担当者の方は、八王子駅南口徒歩1分、企業法務・コンプライアンス・労働問題に強い中村法律事務所に是非一度御相談下さい。