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【大家さんのための賃貸トラブル相談室】 マンションの一室を事業者(託児所等)に貸しても大丈夫?

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【大家さんからの御相談】

マンションの一室(区分所有建物)を貸そうと考えていたところに,託児所をやりたいというAさんから入居申込みがありました。マンション管理規約には住居専用規定が設けられているようですが,このまま賃貸借契約を締結してしまっても問題ないでしょうか?

【弁護士からのアドバイス】

1 結論

Aさんと賃貸借契約を締結することは避けるべきです。

2 理由

本件では, マンション管理規約に,「専有部分を住居の目的以外に使用することはできない。」,あるいは,「組合員はその専有部分を住居の目的以外に使用しようとする第三者に転売及び賃貸してはならない。」との定めがありますので,仮に,託児所として利用することを予定しているAさんに本件居室を貸すことになれば,Aさんは,託児所としての利用を開始した途端,マンション管理組合から,管理規約違反、区分所有者法違反を理由に,託児所としての使用差止を請求されてしまいます。

そうなれば,賃貸人は,管理組合だけでなく,Aさんからも損害賠償等を請求される虞がありますので,Aさんとの契約締結は避けるべきです。

3 裁判所の考え方(東京地裁平成18年3月30日判決)

マンションの一室を本件託児所として利用することは、専有部分を住居の目的以外に使用することであってマンション管理規約に違反することは明らかである。

また,託児所としての利用によって生じる騒音被害は近隣の居住者を中心として深刻であり、他の居住者からも管理人に苦情が寄せられるなど、受忍限度内にあるとは到底いえない。すなわち、居住者の間であれば、自ら子育ての最中であるとか知人等の来訪者が幼い子供を連れて来た場合に、子供が泣いたり騒ぐなどしても、お互い様であるとして通常は問題視されず受忍限度内にあるが、本件託児所においては、人数的にも(1日平均約10名程度。1日の最大利用者は22名程度、同時に在室する最大人数は15名程度)、期間的にも(年中無休。「子育てが終わる」ということもない。)、居住者間で相亙に迷惑をかけあう可能性があるのとは全く異なり、本件マンションの居住者に対して一方的に我慢を強いるものというべきであって、居住者間の関係とは質的に異なるとさえいえるものである。これに加えて、砂や泥による廊下等の床の汚れやエレベーターの利用がしづらいことなどの被害は、託児所として利用していることにより生じたものということができる。

以上検討したところを総合すると、本来住居目的とされているマンションの一室において託児所を営業することは、他の区分所有者に対して一方的に深刻な騒音等の被害を及ぼしながら、何よりも賃貸人の利益のために本件マンションの居住者が一方的な犠牲を強いられて居住用マンションとしての居住環境を損なわれることは相当でないことは明らかであり、さらに、火災等の災害時には生命身体への危険も考えられなくもないのであって、こうした状態をもたらした本件託児所の経営は、区分所有法六条一項に規定する「区分所有者の共同の利益に反する行為」であるというべきであるとして,管理組合の賃借人に対する使用差止請求を認容する判決を下しました。